日々の出来事を綴るブログ
by mori-hako
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2012年 02月 08日
建築家という職能の社会的役割 - 住宅特集 2011.09 -
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「建築家の職域を広げる」とは、つまり建築家の領域が狭まってきていることを示唆する。かつては社会的・経済的要請により、建築家は建築を通して社会へ新たなビジョンを提示し先導する役割を担ってきた。しかし、経済や人口減少など環境が変化する中で、産業や社会からの信頼感が揺らぎ始めている現在、建築を通して社会との新たな関係性を真剣に試行錯誤すべき転換期にきているのだと感じる。
そうした中、8月号の特集では建築家が社会的な役割を広げようとする試みが取り上げられ、対談では社会全体で住宅を支えようとするさまざまな議論が深まっており興味深かった。
「信濃境の週末住宅」はスケルトン・インフィルと思えない程、空間全体が馴染んでいる。建築の枠組み全体で建築家が架構と家具の協働作業に応じているからだろう。とりわけジャイアントファニチャーというスケールを超えた家具の設えがユニークである。一方、施工に当っては家具・大工工事の職域の理解や工事に入るタイミング、現場のやりとりなど全体を統合する建築家と協働者の強度と役割がうかがえた。「小さな家。計画」の徹底した最短流通方法による合理的なシステムは、ユーザーに安価で供給できる利点がある反面、気候風土など場所性との折り合い方や品質の担保などが課題となる。「i-Works・15坪の家」(本誌1102)や「アミダハウス」(本誌1108)のようなコンセプトモデルからプロダクト住宅への展開と実現が待ち望まれる。ネットを介したシステムでさらに飛躍しているのが「CCハウス」である。図面をデーターベース化し様々な立場のユーザーによって更新され、結果としてアノニマスな建築空間につながる点が実に興味深い。それはかつての建築家像と一線を画すものである。鼎談で触れていたようにレシピという捉え方で考えれば、新築のみならずストックの再生にも生かせ、場所性も取り込める可能性がある。つまり、ユーザーが自由にカスタマイズできるので、アーカイブされた図面から、レシピをもとに部分的に取り出すことが可能だからである。さらに大きな枠組みの中で多様なメニューが拡張されていく面白さがある。情報化社会がもたらす新たなネットワークによって人と人とがつながっていける時代のシステムであるように感じた。建築が物理的な存在として成立するために構造・構法・材料の質をいかに担保し、責任の拠りどころを明確にできるか。ユーザーにとって利用しやすい自由な編集方法の開発などハードルは高いが、新しい建築生産システムの今後の展開に期待したい。「7272プロジェクト」は規格材を多用することで協働する工務店とのコストコントロールの健全な関係が担保できている点が重要なのだろう。各工務店の技術・経験・知識に対しても柔軟な判断や先導が建築家に問われるが、何よりも地方においてこうした取り組みが社会との信頼関係を築くキッカケになるように思った。
今回の取り組みに共通しているのは、建築家主導のもとさまざまな人との協働で生産しようとしている点である。そのためのプログラムとモノをつなぐマニュアル的な図面をどのように再編するかが今後の課題であるように思えた。職種領域の区分や加工方法の技量や質感など標準化を追求する中で失われやすいものをいかに担保していけるか。つくり手やユーザー側からの視点に新たな図面表現のヒントが見えているのかもしれない。
社会・経済の環境変化の中で、建築家がこういった取り組みを通して社会的役割を拡張していく先にこそ、社会との信頼関係を再構築する可能性があるように思えた。
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