日々の出来事を綴るブログ
by mori-hako
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2011年 08月 22日
時評/essay - 新建築住宅特集 2011.07 -
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ストックの再生と活性化に向けて
人口・世帯数の減少や少子高齢化社会などを背景に2006年に施行された『住生活基本法』によって、住宅政策は新築供給重視のフローから、ストック重視へと目が向けられ始めている。わが国の既存住宅流通シェアは欧米諸国が平均7割の中、1割程度。特異な新築偏重国である。そして、住宅の平均寿命は30年と極端に短い。
住宅・土地統計調査によると、2008年10月1日時点におけるわが国の総住宅数は5,759万戸、総世帯数は4,997万世帯。すでに住宅ストックは、世帯数を大きく上回っており供給過多である。総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)も、13.1%とほぼ7戸に1戸の割合となっている。空き家757万戸の内訳をみると、「賃貸用の住宅」が413万戸で空き家全体の54.5%を占め「売却用の住宅」が35万戸(4.6%)、別荘などの「二次的住宅」が41万戸(5.4%)、世帯が長期にわたって不在であったり、取り壊すことになっているなどの「その他の住宅」が268万戸(35.4%)で供給可能な空き家が過半数をしめている。
このような状況下において、リノベーションによる持続可能なストックの再生や流通を活性化させることが重要なのはいうまでもない。リノベーションとは既存空間の特性を読み解き、新たな価値を生成することである。その規模や状態、プランニングによっては基準法遵守のための工夫など、コストに大きく反映され、プロジェクト全体を左右することが多々ある。既存図面がない場合などは、実測調査と経験による想像をしながら既存の特性を読み解き、新たな創造を描いていく。見えない不確定要素をポジティブにとらえることで、プロジェクトの方向性が流動的に鮮明になり得る可能性があるのもリノベーションの特徴といえる。
また、ストックの安全性を確保した再生を市場に流通させていくために、構造や性能など現行基準法の整備や仕組みが急務であるように思う。
6月号の特集「リノベーションプランニング」に掲載されている12作品は、こうした今日的多様な建主の状況を映し出すかのように多くのバリエーションがあった。どのプロジェクトも与条件の特性と向き合い、悪戦苦闘しながら導かれたであろう回答も実に多様である。
特に、垣内光司氏の「Do It Yourself」が気になった。そのネーミング通りDIYであるが、築100年の町屋に住むことの覚悟や意味など、住まい手がつくり手として実践することほど愛着が湧かないことはない。図面と現場の状態は全く別の生き物のように存在しているのはもちろんのこと、リノベーションにおいて図面はあくまでも、その方向へ舵をとるための指針でしかない。しかし、このプロジェクトでは設計と施工期間が同時に始まり終わっている。つまり指針がない手探りの状態から、100年という時間に対して建築家と建主が向き合い、再生という目的地に向かって舵をとっていったのではないか。そして、膨大な部分の取り合いや質感・即物的な納まりなど細部にわたって常に対話を反復しながらつくっていったのだろう。その経験は、祖父から受け継いだ町屋の状態変化を建主が意識できる力につながり、未来へ記憶を紡いでいけるリノベーションのあり方に共感した。
場所の記憶とはひとつの建築がつくるものではなく風景としてつくり出すものである。ストックを活かすことは過去と現在を時間で紡ぐだけでなく、地域性を反映した街並みの景観を継承することでもある。コミュニティのスケールに
応じ多様な分野での連携が持続可能社会にとって、今後さらにストックの再生と活性化が必要であると感じた。
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